きょうは日曜なので仕事はおやすみ。
日曜はテレビ番組が充実しているし
仕事場にしているカフェが混み合うので
僕も休む。
双子を
祖母の家に連れて行った。
もちろんママ抜きで。
双子は放っておいても
キャーキャー遊んでいる。
大正生まれの祖母は
94ぐらいで
ちょっとボケも入っている。
それでも
双子を存分に可愛がってくれる。
「ちっともちょどしてねね〜」
「丈夫なだな〜」
と目を細めて
双子を眺めている。
わんぱくが過ぎる時
僕や叔母が注意すると
「ほだなでごしゃぐな」
と
こっちが叱られる。
僕はずっとお茶を飲みながら
ダラダラと世間話をする。
たいていが
父や他の兄弟の過去の話だ。
一番面白いのが
10年前に亡くなった祖父の話だ。
自由奔放に生きた祖父は
結婚前から風俗通いで有名で
結婚後はあちこちに彼女がいたらしい。
祖母がまだしっかりしていたとき
一度だけ聞いたことがある。
大切な話は一度しかしない。
「じいちゃんはカフェ通いで有名だった」
「当時カフェなんて、一部の人しか通わなかった」
と言っていた。
その「カフェ」が風俗であることを知ったのは
10年以上経ってからのことで
祖母は既にボケ始めていた。
他にも
選挙違反で逮捕されかかった話も聞いた。
警察署で祖父と入れ違いとなった際
祖父はすれ違い様に
「何も喋るな‼️」とだけ言ったそうだ。
この話を知っているのは
僕だけだ。
祖母は
「こだな恥ずがしくて誰にもしゃべらんね」
と淡々と話した。
「ほんてやんだっけず」
祖母だけが知っていた話と
叔母の話を統合する。
二度盛大な結婚式を挙げ
二度離婚した叔母は
(離婚式は挙げなかった)
祖父(彼女の父)の話を楽しそうに話すので
僕は喜んで聞く。
僕が中学生の時には
ボケ始めた祖父。
小さい頃から
「謎の存在」だった。
ただ、
その自由さに憧れを抱いていた。
僕には表の顔しか見せなかった祖父。
縦横無尽に生き尽くした。
僕は祖父という人間像を
更新し続けている。
半日双子と離れた妻は
双子に優しくなっていた。