女性のディレクターと名刺交換した。
5つくらい年下だと思われる彼女は
僕の下の名前を呼び
「存じ上げております。以前名刺交換したことあります」
と言った。
僕は全然覚えていなかった。
なぜか、自分より年下の女性は
一つの会社で二人までしか覚えられなかった。
AさんとBさん。
僕に発注してきた制作会社は
「グルメ番組のロケ」
とだけメールしてきた。
てっきりカメラマンだと思っていたが
蓋を開けてみたら
「照明・CA」。
CAってなんだ?
やったことのない仕事だ。
いや、絶対違う。
…
…
あっ。
カメラアシスタントか。
カメラマンの補助か。
僕は局員だったので「補助」とかの仕事をしたことない。
いきなりカメラを持たされた。
カメラアシスタントをやったことがない。
通常、プロダクションは
カメラアシスタント、音声&照明を経て
カメラマンに昇格する。
でも僕は
アシスタントも、音声もやったことがない。
プロダクションからは
「カメラ回せるのに、音声やれないんですか??」
と不思議がられる。
仕方がない。
局では音声は「外注さんがやること」と
決まっていた。
きょうの仕事は
照明とアシスタント。
カースト最下位の仕事だ。
でも、女性ディレクターもカメラマンも
僕が局員のころに知り合っているので
そのときの人間関係を引きずっている。
メチャクチャ遠慮してくる。
僕は、知事会見で場の空気が緊張する聞きづらい質問をしたり
オンエア1時間前の記者会見では
真っ先に手をあげて要点3つを矢継ぎ早に質問したり
勝手に記者団を代表して取材先と交渉したり
と
結構好き勝手やっていた。
(早く仕事を済ませたい一心で、
できるだけスムーズに取材が進むよう心を砕いた結果そうなった)
その結果、
テレビ各社の若者からは
けっこう尊敬されていた、らしい。
(辞めてから知らされた)
そんな人がいきなり
「アシスタントにつく」と言われると
逆にアシスタントされる方は、
けっこう戸惑うらしかった。
でも僕は
照明もカメラアシスタントもメインとしてやったことがないので
仕事は彼らより劣る。
僕が動くべきところで
気付かずに動けないときがある。
そんなとき
ディレクターやカメラマンが
僕がやるべき仕事をやってしまう。
言葉に出して僕に頼むより
自分でやってしまった方が早いのだ。
むむむ。
それではいかん。
僕は反省した。
僕の仕事は
照明でありカメラアシスタントなのだ。
へりくだる必要はないけど
業務は完璧にこなしたい。
というよりも
120%の仕事で返したい。
きょう1日で
3軒ロケだった。
14時間拘束。
きつい。
きついけど
さすがに3軒目となると
僕も要領がわかってきた。
人生初の「箸あげ」も体験させてもらった。
プロにコツを教わると
上達も早い。
照明もだいぶわかってきた。
今日のロケは「カースト」を意識することもなく楽しく進んだ。
撮影後は
「物撮り」のおこぼれをあずかった。
発注先のテレビ局の人とも新たに知り合いになれた。
彼は
「あ~もしかして、元局員の…
いや~お噂は、かねがねから聞いておりました!!」
と嬉しそうに言ってくれた。
そして、
僕がいた局の友人の名前を挙げていった。
僕を慕ってくれている後輩ばかりだったので
彼はもう「仲間」の気分だった。
出演するモデルさんは仙台から来た人で
さすが喋りもレベルが高かった。
いい出会いがある仕事って、すごくいい。
明日もこの仕事だ。
テレビの仕事は
料金以上に何か得るものがある。
あしたも楽しんでこよう。
ちなみに放送は、
29日TBS系列です。
ぜひ山形に来てご覧になってくださるとうれしいです👅