お昼は、93歳の祖母と伯母と「山形国際ホテル」の激安バイキングで一緒に食べた。
子供のいない伯母は、ときおり僕のことを誘ってくれる。
互いの近況を報告し、雑談した。
でも、伯母も僕も世間話が苦手なので、大方の会話は一言で終わる。
一例。
僕が「2軒の大家業が始まった」と言うと
「2軒ばりが」
と面白くない顔をした。
これで会話は終わる。
僕は何も答えず、中国にいる双子の動画を見せた。
2人は笑顔で画面をのぞいていた。
鉄板は「ご先祖様」の話。
きょうもその話で盛り上がった。
祖母は耳が遠いので会話には混ざらないが、
以前祖母から聞いた「我が家の出身は左沢」と話すと
伯母は
「知らなかった」
と感心した。
寒河江に誇りを持っていた伯母としては面白くない情報だったかも知れないが。
一方で、祖母はもくもくと食べていた。
きちんと一人分以上食べる。
お腹いっぱい。
伯母は別れ際、畑で採れた野菜をくれた。
ピーマンとサツマイモだった。
昼寝したあと僕が思ったのは
「野菜が食べたい」
ということだった。
バイキングでは、野菜はサラダしかなく、思うように青物野菜を食べられなかった。
無性に野菜が食べたかった。
いただきもののピーマンを調理することにした。
相変わらず続く体調不良で、外に買いに行く気力はない。
調理するしかなかった。
僕がピーマン料理で一番得意なのが、煮物。
僕にとっての黄金率
醤油3:お酒2:みりん1
これで煮込めば、全てものがおいしくなる。
ただ、醤油大さじ3は、3種類使うのが、僕のこだわりだ。
要は
「いろんなもの混ぜればうまくなるべ」という目論見だ。
野菜が食べたい。
その思いは、僕に数ヶ月ぶりの包丁を握らせた。
僕はシラフでは料理ができない。
でも今はお酒をのむエネルギーもない。
音楽をかけることにした。
ミスチルにした。
歌うのが楽しい。
歌っているうちにますます喉が痛くなった。
それでも歌い続けた。
切っている間は歌って気を紛らわせる。
ピーマンを炒め、黄金率セットを混ぜた。
ちょっとしょっぱそうなので、100ccほど水を混ぜた。
「365日」や「抱きしめたい」を歌っているうちに気分が良くなってきた。
気分が乗ってきた。
ピーマンを10分煮込む間に、もっと料理がしたくなってきた。
冷蔵庫にある卵を半熟煮卵にすることにした。
沸騰してから7分待つ。
そうだ。
味噌汁も作ろう。
もらったサツマイモを軽く洗い、皮ごと切って3分間チンした。
そのまま、沸騰した鍋に入れる。
ほっこりと甘くておいしいサツマイモだった。
冷蔵庫に入っていた豆腐ハンバーグ、ヒジキ、キャベツを加えて…
ずいぶんと豪華な夕食になった。
お腹いっぱい。
体調不良は相変わらずで、
食べないと調子が悪くなる。
でも、少しずつ気力が戻ってきているのがわかる。
料理を始められたのもその証拠だ。
気合いを入れてダラダラ過ごしてきた効果が表れ始めた。
この調子できちんと食べて、しっかりダラダラして以前の自分に戻りたい。
明日は人に会う。スタバでナンパした男性とだ。