4月11日(木)
商工会議所に行く直前、僕は、きらやか銀行に向かった。
通帳記入するためだ。
記入は4ヶ月ぶりだ。
敢えて記入していなかった。
なぜか?
残高が減っていることが確実だからだ。
支出は最低限に抑えているつもりだが、それでも収入が限られている今、残高が減っているのは間違いない。
要は、現実から目を背けていたのだ。
しかし、商工会に相談に行くといういことは、融資について真剣に向かい始めた、ということ。
事業にいくら回せるのか、今改めて把握する必要があった。
決算会見以来のきらやか銀行本店を出た僕は、既に数回ため息をついていた。
減り方が予想よりちょっと早い気がした。
商工会で相談を終えた僕は、更に意気消沈していた。
このまま家に帰る気になれなかったので(双子の笑顔を見るのが怖かった)、スタバに寄ることにした。
書く以外に救われる道はないような気がした。
とりあえず書こう。
おしゃれなカフェの中で、僕は一人、鬼のような形相で、バチバチと耳障りなタイピングの音をたてながら、黙々と文字を重ねていった。
構成も何もない。
ただただ、自分を救うために書いた。
書くことで、今しがたあった出来事を、客観的に眺めることができる気がした。
いくら客観的に眺めても、絶望的な状況に変わりはないだろう。
それでもしかし、ブログ(ハローワークからの呼び出し,商工会議所に相談に行ってみた)を2本書き終えたときには、だいぶ落ち着きを取り戻していた。
それでも、親しい友人に電話をすれば、負の感情を撒き散らしてしまいそうだった(それでも彼は受け止めてくれるに違いないのだが)。
そこで僕は、S銀行に勤める友人JMOJに電話することにした。
JMOJは、僕を好意的に見守ってくれている友人の一人だった。
住宅ローンを引くときも、利率について相談したし、
会社を辞めるときも住宅ローンの扱いについて相談した。
彼はいつも、友人として気軽に応じてくれた。
今回は
「不動産投資は事業としてみなされないのか?」と質問した。
彼は理路整然とアドバイスしてくれた。
・政策金融公庫のような公金を融資するところは「事業とはみなさない」可能性は高い
・そのため、県の補助金なども受けるのは難しいだろう
・民間の銀行はそうとも限らない
・「リノベーション費用、どんな人にいくらで貸すのか」などをきちんと示し、利益を上げられることを示せれば、銀行は融資をする
これなら、商工会議所の職員が言っていることとは、だいぶニュアンスが違った。
一度どん底に落とされた僕だったが、さっそく這い上がってきた気分になった。
そうか。それなら何とかなるか…
僕は丁寧に礼を述べた後
「また相談させてくれ」
と言って、電話を切った。
数時間ぶりに呼吸を開始したような気分になった。
ようやく家に入る気持ちも整った。
家に帰ると、いつも通り双子が
「爸爸回来了!!爸爸回来了!!」
と駆け寄ってきて、僕の足に抱きついた。
僕は改めて思った。
友人の何と頼もしいことよ。
友人の何とありがたいことか。
僕には、こんなにも優秀な友人がいる。
しかも複数。
すごいことだ。
抱きついてくる双子を見ながら、僕はしみじみとそう感じた。
ただその日、僕は夜中に何度も目を覚ました。
双子は寝息を立ててぐっすりと眠り続けていた。
僕は暗闇の中で
「父親の自分」と「無職の自分」をいったりきたりしながら、不安と戦わねばならなかった。