4月3日。
午前中、師匠に電話した。
彼は
「競売物件なみに安い」と言った。
僕はこれで
「買いだ」と確信した。
今こうして書いてみると「リップサービスもあったのだろう」気づくが、「安い」と言っていいのは間違いないのだろう。
懸案の駐車場を増やす件も、写真を見る限りすぐいけるだろうという。
彼は
「本当に買うのか?」と聞いた。
僕は
「買うつもりだ」と答えた。
おそらく、その声には、覚悟がにじみ出ていたんじゃないかと思う。
壊しようのない、迷いのない答えだった。
彼は
「現金で買うのか?ローンを引くのか?」と聞いた。
僕は
「現金で買う」と答えた。
これもまた、迷いのない答えだったはずだ。
Nとの相談の中で、現金で買って事業を始めることで
①経験を積む
②2軒目以降の共有担保にもできるし、既に事業を始めているということで、金融機関の信頼度が上がり、融資を受けやすくする
③ローンの返済がないので、客が入らなくても怖くない
むしろ「資金調達のための退職金目当てで会社を辞めた」というのも大きい。
だから僕は1棟目は「現金派」でいこうと、腹を決めていた。
しかしそこで師匠は僕に待ったをかけた。
今サラリーマンをしている師匠は、2度、自分で会社を起こして失敗している。
現金がなくなっていく怖さを嫌というほど味わってきた人だ。
優しすぎるのだろう。
仕事はできるけど、自分の利益を確保するのが申し訳なくてできない。
彼は
「個人事業主は、自分の金と仕事の金の区別がつかなくなってくる」と言った。
そして
「個人事業主の9割は、お金が回らなくなって、月末はいつも夫婦ゲンカになる」と、恐ろしい事実を僕に伝えた。
「とりあえず、現金は手元に残しておいたほうがいい」
彼のアドバイスは、ものすごく実感が伴っていた。
「2年間返済しなくてもいいローンなどもある。補助制度もあるだろう。そういうのを目一杯活用して、現金を作ったほうがいい」
師匠は、手を替え品を替え、現金を持たない怖さを滔々と僕に語ってくれた。
学校の休憩時間の20分が過ぎようとしていた。
「現金派」だった僕の気持ちは、もう土台からグラグラと動いていた。
現金が足りなくなったらテレビでバイトすればいい。
そう高を括っていたが、不安になると、全てが不安になってくる。
テレビの仕事だって、本当に発注があるのか?と不安になってきた。
むむむ…
彼は
「一度、商工会に相談に行った方がいい」という。
僕は礼を言って電話を切り、授業に戻った。
床フローリング張り。
ものすごく実践的だ。
さあ、しっかり学ぼう。